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在宅医療の現場から

訪問薬剤師の専門性を生かし患者さんの人生の伴走者になる

住み慣れた自宅で療養生活を送る高齢者が増えてきているが、在宅療養を続ける上で必須になるのが毎日の服薬をきちんと管理することである。患者さんの生活を支えるために、訪問看護や介護に加えて薬剤師による訪問服薬指導も増加している。家庭を訪問する薬剤師に求められることはどのようなことなのだろうか。在宅への訪問を通じて薬剤師としての様々な役割に挑戦し続けるみずしろ調剤薬局(栃木県栃木市)の山口哲郎先生を訪ねた。

パーキンソン病の患者さんの服薬管理に試行錯誤

みずしろ調剤薬局は、栃木県内に4店舗を展開する有限会社ダイトクを母体とする調剤薬局である。これまでも必要に応じて在宅への訪問をしておりターミナルの患者さんを支えることもあったが、数カ月前から在宅を訪問することになったAさんの事例で多くの気づきを得ているという。
Aさん(70歳代女性)はパーキンソン病を発症し入院を経て在宅へ戻ってきた。同年代の夫と二人暮らしである。パーキンソン病は服薬状況で病状が大きく左右される疾病である。振戦、すくみ足から転倒という危険を伴う病気であるが、薬を飲むことで症状を抑えることができるため、きちんと服薬することが必要だ。そこで、Aさんが以前から利用していたみずしろ調剤薬局にケアマネジャーから介入の依頼があり、山口先生が在宅訪問を行うようになったのである。

「初回に訪問した時点では服薬管理がまったくできていませんでした。薬カレンダーの利用もなく一包化された薬はグルグルと巻かれたまま薬袋に入っていました。管理はご主人がされていたのですが、ご主人が出かけている時はAさんが薬袋から一包ずつ手あたり次第に取り出して飲んでいる状態でした。分包に書かれた服用日時は守られておらず、一日の服薬量がくるってしまい、なにより飲み過ぎになる恐れがありました。これでは適切な治療に結び付きません。薬カレンダーを活用して配置するようにしたのですが、それでも処方通りには飲まれていませんでした。
きちんと服薬ができるように考えたのは、まずご主人の協力を仰ぐことでした。違う日の薬を飲まないようにするために、寝る前にご主人に薬カレンダーの中から翌日分を取り出してプラスチックの薬ケースにセットしてもらって、一日の中の量は狂わないようにしてみました。そうすれば仮に時間帯を間違えても、少なくとも一日の中での飲み過ぎはないだろうということで試したのです。しかし薬カレンダーに薬をセットして一週間後に行ってみると、やはりご主人が不在の間の分は薬カレンダーから不規則に薬が取り出されており、まったくうまくいきませんでした」と、山口先生は当初の状況を振り返る。

「eお薬さん®」の導入によって意外な効用が

山口先生がエーザイの開発による服薬支援機器「eお薬さん®」の存在を知ったのはちょうどケアマネジャーから介入の依頼があったころだった。たまたま参加した勉強会で展示されており興味は覚えたがすぐには導入しなかった。しかし上記のような経緯でAさんの服薬管理がうまくいかなかったことから「eお薬さん®」の活用を考え、Aさん夫婦に提案した。
服薬にIT機器を利用するということに対する抵抗感があるのではないかと心配したが、Aさんもご主人も前向きに受け入れてくれた。Aさんの服薬は1日に8回だが「eお薬さん®」でセットできるのは1日4回分だったため、服薬のすべてを「eお薬さん®」に頼るのではなく、ご主人が外出がちの日中の9時、12時、15時、18時の4回分だけを利用することにしてそのほかはご主人に管理してもらうということで試用してみたところ、運用開始1週間を過ぎた段階で服薬の脱落は1回のみ、その後2週間の継続利用でも服薬遵守率は95%にまで改善させることができた。そこで本格的に導入することになった。
「eお薬さん®」の効果は服薬遵守率の改善だけではなかった。「「eお薬さん®」があるから安心して出かけられる」という感想をご主人から聞くことができたのだ。妻が病気になり、自分が主介護者になることは、もしかするとご主人にとっては想定外の出来事だったかもしれない。妻にきちんと薬を飲ませなくてはいけないということがご主人のストレスとなり、Aさんにイライラをぶつけることもあったという。日中の服薬管理から解放されたことにより、ご主人が自分の時間を持つことができるようになった。「空間的、時間的な距離を置くことでお二人の関係性にもゆとりが生まれます。「eお薬さん®」を使うメリットとして、家族が自分の自由時間をもつことができる、ということもあるのかもしれません」と山口先生は仰っている。

多職種連携でAさんの暮らしを支える

ただ、Aさんをめぐる問題はこれで解決できたわけではない。Aさんにとって薬を飲むということが、病気を治すという前向きな動機からではないことが見えてきたからだ。本来患者は「薬を飲むことによって病状が抑えられる」という理解の上で服薬するが、Aさんの場合はそれよりも「薬を飲まないとご主人に怒られる」といった意識が働いているのではないかと思えたのである。
このままではセットした時間に薬のケースが出てきても、薬を取り出して飲まずに処分してしまう可能性も否定できない。「「eお薬さん®」を利用することで薬を取り出すというところは担保できるようになりましたが、服用していることは確認できないわけです。それまでは薬剤師は薬をセッティングするところまでが仕事だという認識がありましたが、それでは不十分だということに気付きました。つまり患者さんが自らパーキンソン病の治療薬を服用することで、転倒を抑えADLが低下するのを防ぐ、その手助けをすることが薬剤師の役割であり、服薬までかかわってこその訪問薬剤管理だということです。もし処方通り飲んでいなければ、正確な医師の診察が期待できなくなります」と山口先生。
山口先生は、こうしたケースでは多職種連携がとても重要なカギになることを実感している。そのため訪問看護師等と連携して状況を互いに把握し合い、薬を服用しない可能性があることも主治医に報告をしている。また月1回開かれる地域での多職種報告会に薬剤師として参加し、情報交換をしたり医師の意見を聞いたりしながら情報共有に努め連携しているという。

薬剤師は医療面から患者さんの人生に関わる仕事

Aさん宅への訪問は週1回である。服薬時間の30分ほど前に行き、まず話をしながらAさんの変化や状態を把握する。服薬の時間になるとAさんが薬を取り出して服薬するが、手を出さずに見守り、さらに服薬後30分ほど様子を見て問題がなければ家を辞する。帰る時には、訪問時にはほとんど動けなかったAさんが「玄関まで送るよ」と言ってくれるほどの薬効を見ることができるという。
ご主人とも話をしながら家の中の危険個所をチェックしたりもする。そして危険個所があればケアマネジャーや訪問看護師とも情報を共有して、安全な環境のもとAさんが安心して暮らし続けられるにはどうしたらいいかを一緒に考える。
「お宅に伺うといろいろな問題が見えてきます。ご家族のトラブルに接することもあります。薬剤師であることの前に、生活の様子を見て患者さんやご家族の気持ちをどうくみ取るか、そしてどう接するかを考えたいと思います。同時に、薬を服用することでQOLに効果が出ているのか、またその人が健康になってもらえるのかなど、患者さんが薬を飲んだ後の健康、生活を見通すことも大事だと考えています」(山口先生)。
ただ飲むことを促す服薬指導でなく、飲むことが自分のためでありこれからの暮らしのために必要なものであることを患者さんとご家族に伝えることがアドヒアランスの向上に結び付く。
「在宅を訪問する薬剤師には医療面から最期までその人の人生のストーリーに関わっていくという役割があるのです。そのためには私たちがやらなくてはいけないことはまだまだありますし、とてもやりがいを感じています」と山口先生は今後の意欲を語ってくれた。

※使用感は個人の感想です。

※見守り支援機能を搭載した服薬支援機器「eお薬さん®
製品に関する詳細は、eお薬さん®のサイトをご覧ください。http://e-okusurisan.com/
「eお薬さん®」は医療機器ではありません。

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