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在宅医療の現場から

在宅緩和ケアを後方支援する常勤薬剤師

医師が訪問先で患者さんの病状の変化を認め、薬の増量や減量、追加や中止など、処方変更が必要と判断したとする。しかし、投与量はどうすべきか、どの薬剤を追加するべきか、どんな剤形が望ましいかなど、ときに迷いが生じるケースがある。このような場合、わたクリニックの医師は患者さんの状態をモバイル端末から電子カルテに入力した上で、クリニックの常勤薬剤師である佐久間詠理先生に電話をかけ、意見を求めることができる。相談を受けた際の対応について、佐久間先生は次のように説明する。

「電子カルテの情報を参考にしつつ、オピオイドの換算表を用いて投与量をチェックしたり、インタビューフォームを参照したり、場合によっては製薬会社に電話をするなどして、医師の考えている処方が適切かどうか、処方変更などが必要かどうかを薬学的な視点から確認し、助言をしています」

また、たとえば注射剤の投与量が変更になった際は、処方箋とは別に「なぜそうなったのか」を薬局の薬剤師に伝えることもあるという。「変更の根拠がわかれば薬局の方も安心して調製できると思うので」というのがその理由だ。

佐久間先生は訪問診療に同行することもある。薬物治療における迅速な対応が必要だったり、服薬コンプライアンスが不良の患者さんが対象となる。

佐久間 詠理先生の取材時の画像。
佐久間 詠理先生

「入院中にオピオイドの持続投与が開始されているケースでは、事前情報に基づいて在宅での用量を決定するのですが、実際に訪問してみるとつながれている薬液の量が情報と異なることがあります。この場合、すぐに注射剤の準備を依頼するなど、早急な対応が必要になることもあり、速やかに連携する薬剤師や訪問看護師に連絡しなければなりません。薬物治療を途切れさせないための橋渡しも自分の役割だと認識しています。

また、服薬拒否があったり、精神疾患を持つ患者さんの診療に同行して、なぜその薬を飲む必要があるのかについて説明したり、剤形などを変更する必要がないかを確認したり、服薬コンプライアンスを改善、向上させるためのフォローも行っています」

医師と薬物治療について話し合う佐久間先生の画像。
電話での対応だけでなく、クリニックで電子カルテを見ながら、医師と薬物治療について話し合うのも日常的な光景。

常勤薬剤師の役割を発信していく必要性

常勤薬剤師としてわたクリニックで働き始めて5年。同じ立場の上司や同僚がいない中で、「最初のうちは薬剤師としての自分の役割がわからずにいました」と佐久間先生は振り返る。いまもまだ明確な結論は出せていないと言うが、佐久間先生の仕事ぶりに対する医師の評価は高い。

「AとB、2つの薬剤がありどちらを用いるか判断に迷ったとします。こういった場合に、薬剤特性はもちろん腎機能や肝機能などの検査値を確認、考慮した上での[肝臓への負担を考えればBを選択すべき]といったアドバイスは、薬剤師ならではの対応だと感じています。また、混濁や沈殿など、混注時の配合変化などに関して助言をもらうことも多く、本当に頼もしいです」(首藤先生)

在宅療養支援診療所に常駐する薬剤師はまだ少ない。医師や連携する多職種が、その働きを評価しているとしても、診療報酬上の評価はないのが実情だ。「自分のやっていることを外に発信していく必要があると思っています」。何気ないその一言には、強い意志が込められていた。

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