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在宅医療の現場から

脳卒中の再発予防と地域連携

退院後の再発予防を見据えた対応

 同院と地域の医療施設との連携のあり方は、他の病院と大きくは変わらない。外来患者の紹介および逆紹介は地域医療連携室が窓口となる。一方、在宅医療に移行する入院患者の場合は、まず、院内の看護師やソーシャルワーカーらによる退院支援チームが介入。退院後に必要となる医療処置や介護サービスなどを検討、整理するほか、患者さんや家族への情報提供を行う。その後、退院前カンファレンスを実施。訪問看護師やケアマネジャーらを交えて情報のすり合わせを行い、最終的な調整を図るというのが基本的な流れだ。

 在宅医療との関わりについて、森田先生は「回復期リハ病棟や包括ケア病棟から退院されることが多く、脳神経外科医が直接、退院支援に関わる事例は少ない」と言う。だが、退院後を見据えたアプローチを行っていないわけではない。代表的なものとして挙げられるのが薬剤の調整だ。脳卒中の再発予防においては、服薬コンプライアンスをいかに維持していくかがカギとなる。必要に応じてポリファーマシーの是正や服用薬剤を1日1回のものに揃えるなど、処方の見直しを行っているそうだ。

カンファレンスを通して相互理解を深める

 同院では、地域の開業医と顔の見える関係をつくる、相互理解を深めるために、年2〜3回『連携カンファレンス』を実施している。開業医のニーズが高い最新の治療トレンドなど脳卒中の啓発を目的とした講義、実際に開業医から紹介された症例の報告のほか、会の後半には開業医から質問や要望などを受ける時間を設けている。

「脳卒中の予防で開業医の先生方が担うのは主に一次予防、すなわち発症予防です。しかしながら、副作用を懸念してか、必要な薬剤が十分量投与されずに再発してしまうことも少なくありません。再発を少しでも減らすためにも、脳卒中という疾患や治療のあり方についての啓発が重要になります。

 また、一口に脳卒中の一次予防といっても、[どんな薬剤をどう用いるべきか][どのような場合に紹介すべきなのか]など、地域の先生方にはさまざまな疑問があるでしょう。病院と連携する上で要望したいこともあると思います。連携カンファレンスは、病院の専門医と開業医がそれらをざっくばらんに話し合う場でもあります」

訪問看護師らとのコミュニケーションから得る気づき

 同院のこれまでの歩みを見ると、地域医療に対する強い熱意がうかがえる。1990年から訪問看護を始め、1995年には訪問看護ステーションを開設。20年以上も前から、外来や入院だけでなく、生活の場でも患者さんと向き合ってきた。近年は訪問リハビリテーション事業所や居宅介護支援事業所も併設され、スタッフの増員も図るなど、医療と介護の両面から多くの在宅患者を支えている。

「当院を退院し、在宅医療を受けることになった患者さんの多くに、在宅部門の訪問看護師やリハビリスタッフ、ケアマネジャーが関わっていると聞いています。最近はとりわけリハビリに対するニーズが高まってきており、新たに言語聴覚士を採用して摂食・嚥下リハビリなどに力を入れていきたいという考えもあるようです」

 脳神経外科の病棟と在宅部門は建物がつながっていることもあり、「退院した患者さんの在宅での状況をフィードバックしていただくこともよくあります」と森田先生。訪問看護師らとのコミュニケーションから学ぶこと、気づかされることも多いそうだ。

「ある訪問看護師の方からこんなふうに言われました。[退院した患者さんがその日、自宅でどんな食事をして、どんな生活をしているか想像がつきますか]と。ハッとさせられましたね。病院に求められるのは、そこまで想像した上で、明日から自宅で問題なく生活ができるという状況を整えてから、地域の先生方にバトンタッチすることなのだと。あらためて痛感させられました」

  • 施設の表札と訪問用車の画像。
  • 訪問看護ステーションの画像。訪問中のため人が少なく静かな室内。
訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所、訪問リハビリテーション事業所が1つのフロアに。仕切りがないため職種間のコミュニケーションもしやすい。“訪問”が仕事なだけあって、1日の始まりと終わり、昼食時を除くと事業所内は静かだ。
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