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在宅医療の現場から

【医療法人社団 焔 やまと診療所】
家へ帰る、はじめの一歩に寄り添う仕事

取材日:2018年11月12日 東京都板橋区 やまと診療所

Clinician@Home 2019冬号で東京都板橋区のやまと診療所を取り上げた。誌面では“機能分化”をキーワードに、同診療所の現状と今後の展望について紹介。診療所内の機能分化の一例としては、診療アシスタント(在宅医療PA)や地域連携部のMSWら各スタッフの役割を概説した。本稿では、地域連携部のマネージャーである針生彩子さんにご協力いただき、MSWの日常や病院との関係強化のポイントなどについて紹介する。

医療法人社団 焔 やまと診療所 外観の画像

医療法人社団 焔
やまと診療所

  • 所在地:東京都板橋区東新町1-26-14
  • 医師:常勤9名、非常勤17名
  • スタッフ:約80名
    (診療アシスタント、MSW、レセプト、クラークほか)
  • 在宅患者数:約600名
  • 2017年度看取り数:301名(うち自宅看取り206名)

初回診療前に、MSWが患家や病院を訪問

 地域連携部、地域連携室、地域連携センターと聞いてまずイメージするのは、患者さんの紹介および逆紹介の調整や入退院支援など、病診連携に関連する業務を担う病院の部署だろう。だが、最近は在宅診療所でも、MSWやケアマネジャーらを配した地域連携関連部署を設ける事例が増えてきている。やまと診療所もそうした在宅診療所の一つであり、2016年に地域連携部(以下、連携部)を立ち上げた。2019年1月現在、針生さんをはじめ6名のMSWが実務に携わっている。

 在宅医療の開始に向けて、その入り口部分の調整を担う。それが連携部の役割だ。主業務の一つが“診療前訪問”であり、訪問診療の開始に先駆けてMSWが患家や病院を訪問。患者さんや家族に在宅医療の概要、必要となる費用やサービスなどについて説明するほか、生活状況や家族背景、思い、希望などの聞き取りを行う。ここで得た情報は電子カルテに記録したり、直接、医師や在宅医療PAに伝えるなどして、情報共有を図っている。

 診療前訪問の必要性を始めて実感したときのことを、針生さんは次のように振り返る。

針生 彩子さんの取材時の画像
地域連携部 マネージャー
針生 彩子さん

「診療所が開設されて間もないころの話です。初回診療に同行した私が、医師の診察が行われるのと同時に契約や料金など在宅医療に関する説明を行い、家族の理解が追いつかず、不安にさせてしまったことがありました。初回の診察と料金などの説明を同時並行で行うのは、患者さんや家族にとって負担が大きいと痛感し、別々に行ったほうがよいと思いました」

 診療前訪問を開始した理由はもう一つある。むしろ動機としてはこちらのほうが大きいかもしれない。

「初回の診療時に、患者さんが医師に自分の思いや希望を整理して伝えるのは簡単なことではないと思います。たとえば点滴を導入したとして、後から「実は望んでいなかった」と話す患者さんもいるかもしれません。ですから、私たちは事前に患者さんや家族とお会いし、その人の歴史やどんな医療を望んでいるのか聞き取り、あらかじめ医師ら診療チームに伝えておくのです。そうすれば、患者さんの思いを汲んだ診療を最初から行うことができますよね」

 先に紹介した役割を果たす過程で患者さんと信頼関係を構築していくというのも、診療前訪問の重要なポイントといえるだろう。「事前に信頼関係を築いておくことで、その後の診療がしやすくなります」と針生さん。

 ちなみに、在宅医療開始に向けた入り口部分の調整とは、診療前訪問で得た情報を医師らに伝えて終わりではない。MSWは可能な限り、初回の訪問診療にも同行するという。患家では、まずMSWが医師を紹介。その後の診療にも立ち会い、両者を知る立場から助言をするなど、医師と患者さん、家族のやり取りをサポートする。事前の訪問を通して信頼関係が築けているMSWがその場をリードするため、医師との初めての顔合わせに伴い生じる患者さんや家族の緊張感も緩和される。

「どんな人たちが来るのか、何が始まるのか。そんな落ち着かない状況の患者さんと家族にとって、自分たちのことを理解してくれているMSWがその場にいるのは心強いと思います。私たちが場を取り仕切れば、硬くなりがちな初回診療時の空気を和らげることもできます。また、患者さんが医師の話を理解できていないと感じ取った場合は、代弁するかたちで私たちが再度の説明を求めるなど、潤滑油的な役割を果たすことを心掛けています」

オフィスで、電子カルテに情報を入力する地域連携部(MSW)の皆さんの画像。
在宅医療開始までに必要な調整が主なMSWの役割であり、開始後の患者支援や地域の多職種との調整などは在宅医療PAが担う。それぞれが得た情報は電子カルテに入力し情報共有を図っているが、直接やり取りをする機会も多いという。
Clinician@Home

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