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かかりつけ医に必要な在宅医療の知識

かかりつけ医に必要な在宅医療の知識(第8回)

子どもの笑顔と成長を大事に生活目線で連携して支える紅谷 浩之(オレンジホームケアクリニック 代表)

はじめに

厚生労働省の人口動態統計によれば、2016年に生まれた子どもの数(出生数)は97万6,979人で、1899年の統計開始以来、初めて100万人を割り込んだ1)(図①)。

図1出生数および合計特殊出生率の年次推移のグラフ。昭和22から24年の第一次ベビーブームで最高の2696638人が出生した。その後は第2次ベビーブーム以降減少

一方で、新生児の死亡率は医療技術の進化などによって出生1,000人当たり1人となっており、日本はアメリカやイギリスなどの先進諸国と比べても、世界一赤ちゃんが死なない国でもある2)。
こうした中で、人工呼吸器や喀痰吸引などの医療的ケアを必要とする子ども(医療的ケア児)の数は、2015年度に1万7,078人に達し、10年前のおよそ2倍になった3)(図②)。

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同時に、新生児集中治療室(NICU)の満床などを背景に病院を退院し、自宅など地域に出て生活するケースも増えており、地域のかかりつけ医師の果たす役割は確実に大きくなっている。大切な小さな命を救える国は、同時にその命を支えられる国にならねばならない。

生活目線を大事にした関わり

私は在宅医療を専門とする地域の医師である。小児科専門医ではない。しかしながら、日々の訪問診療を通して、自宅で療養生活を送る子どもたちとその家族が、地域にかかりつけ医がいないことで困っている現状を目の当たりにして、2011年に子どもたちの診療を始めた。今では約40人の子どもたちをみさせてもらっている。
彼らの多くは、脳性麻痺や筋ジストロフィーなどの神経・筋疾患や18トリソミーといったような重い病気や障害を抱えており、胃ろうや経鼻胃管をはじめ、気管切開や人工呼吸器などの医療処置が必要である。こう書くと、私には小児科専門医としての知識が求められそうだが、実際はそうでもない。専門的で難しい判断や治療は大学病院などを頼り、訪問診療では、地域で暮らしていく中で生まれる、様々な悩み事の相談にできるだけ時間を割いている。医療目線よりも生活目線を持った関わりのほうが大事であると感じている。

多職種連携で子どもたちの成長を支える

子どもたちはその成長段階において、高齢者と比べて、関係する職種やサービスが多岐にわたる。例えば、医師においても、高齢者は地域のかかりつけ医が主治医として関わるが、子どもたちの場合は、病院の専門医やNICU、療育病院のリハビリ医、レスパイト施設の医師など登場人物が多くなる。また、医師以外でも、看護師やリハ職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、ヘルパーなど高齢者でもお馴染みの職種に加えて、相談支援専門員、保育士、教育者、行政保健師などの関わりも欠かせない。
こうした多職種間の調整は大変である一方、コミュニケーションや連携が良い影響を及ぼすことも多い。何より地域のみんなで支えていく姿勢が大事だと思う。

暮らしに、家族に、未来に、地域につながる

では、具体的に地域のかかりつけ医には何ができるのか。ポイントは四つあると考えている。一つ目は「暮らしにつながる」ことである。病院では決められた時間に食事や薬が与えられ、子どもたちに選択権はない。しかし、自宅ではその子らしさが尊重されるべきで、当然ながら家族全体の生活リズムも考慮しなければならない。医療者の都合を押し付けることなく、目の前の暮らしに目を向けた上で、都度対応を話し合っていくべきである。
二つ目は「家族につながる」ことである。病院では子どもたちの付き添いであった家族も、家では誰もが主人公になりうる。誰かが怪我をしたり病気になったりすれば、家の中のバランスは崩れてしまう。だからこそ、子どもたちだけをみるのではなく、同時に家族もケアすることが、ひいては子どもたちの元気を支えることになると思っている。
三つ目は「未来につながる」ことである。子どもたちは様々な経験を経て成長し、いずれ大人になっていく。今日明日といった短期的な視点以上に、長い目で将来を見据えた関わりが必要になる。これから先、小学校入学の際はどうするのだろうとか、大人になってからの夢は何だろうといったようなことを、一緒に考え悩んでいくことが大事だと感じている。
最後は「地域につながる」ことである。子どもたちは病院を退院して、自宅での生活を始めることがゴールではない。あくまでスタートであり、家での療養が全てではないはずである。地域に出て、経験を重ねていくためにも、身近なかかりつけ医の存在が安心につながればよいと思う。

日中一時預かりで生まれる笑顔

私は訪問診療と並行して、2012年から医療的ケア児の日中一時預かりを行っている。彼らの日中の活動場所が少ないことを知ったのがきっかけになった。地域に福祉施設はあっても、残念ながら受け入れを断られることも多い。背景には医療的ケアに対する施設スタッフの不安がある。
私たちが立ち上げた拠点「オレンジキッズケアラボ」では、看護師が常駐して医療的なケアにあたることで、誰もが安心して預けられる環境を整えている。現在は約30人の利用登録があり、毎日10 人ほどの子どもたちが通ってきている(写真③)。

画像3オレンジキッズケアラボでの活動の写真。子供たちが集まって、お絵かきしている様子が写されている。

また、看護師などの医療職に加えて、保育士を配置することで、様々な遊びを通して成長をサポートするとともに、互いに楽しさを共有することも大事にしている。皆さんもクリニックの一角を開放して、まずは医療的ケア児を預かってみてはいかがだろうか。子どもたちのみならず、その家族や働くスタッフにも笑顔が増えるのを実感できるはずである。

おわりに

医療的なケアが必要な子どもたちと関わる中で、私は気づかされたことがある。それはできないことを補うのではなく、常に明るく前を向いて、できることを探し続けることの大切さである。これは高齢者や認知症患者との関わりにおいても、同じ重要な視点であると感じている。どんなときにおいても、笑顔と成長は、生きる上での活気につながるのではないだろうか。医療的ケア児の存在を必要以上に難しく考えず、まずは一人でも多くのかかりつけ医が、地域の仲間と手を取り合って、彼らに関わっていってもらえたらうれしく思う。

【文献】

1)厚生労働省:平成28年(2016)人口動態統計

2)World Health Organization : World Health Statistics 2015 (2015)

3)平成28年度厚生労働科学研究補助金障害者政策総合研究事業「医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究」

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