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訪問薬剤師の取り組み

認知症でも最期まで住み慣れた地域で

「最期まで住み慣れた自宅で暮らしたい」。在宅で暮らす多くの高齢者から聞かれる言葉である。しかし独居や高齢者のみで暮らしている方などは認知機能が衰えてくると、その望みをあきらめざるを得ないことも多い。
高齢者は、薬の飲み忘れが症状の悪化につながり、生活が成り立たなくなっていくという負のスパイラルに陥りがちだ。服薬支援機器「eお薬さん®」の活用が、そうしたスパイラルを断ち切るために功を奏したケースがあるという。新潟県上越市の有限会社中央調剤薬局グループ、オタケ薬局の管理薬剤師・西村直泰先生を訪ねた。

「eお薬さん®」の導入で服薬率が向上*使用感は個人の感想です。

中央調剤薬局グループは上越市に10店舗1施設を構え、地域に根差したサービスを掲げる薬局である。ケアマネジャーとの連携を重視し在宅への訪問を積極的に行っている。
オタケ薬局でも40人の患者様への訪問を行っており、西村先生はそのうち10人の在宅患者様を担当しているという。
「『eお薬さん®』を活用しているのは90歳代と70歳代の2人暮らしのKさんご夫婦です。今年の初めごろまでは奥さんが来局して薬をお渡ししていたのですが、ケアマネジャーから『薬の飲み方に不安があるので訪問してほしい』と依頼を受け、訪問が始まりました」

夫婦とも朝夕の薬の服用が必要で、薬を管理していたのは70歳代の妻だったが、訪問してみると確かに不安な面がうかがえた。会話の受け答えはしっかりしているものの、自身の薬の在りかが分からなくなっていたのである。そこで西村先生はお薬カレンダーで対応することにして、2人分をカレンダーにセットして帰った。ところが数日後に再訪すると、お薬カレンダーには1回分しか手をつけられておらず薬はほぼ全部残っていたという。
「そこで考え付いたのが『eお薬さん®』の活用です。グループ内の他の店舗で『eお薬さん®』を導入しているケースがあり、功を奏していると聞いていたので試してみようと思いました。奥さんは日常の会話も動作もしっかりしていたけれども薬の時間を見計らうということができずに飲み忘れていたと思われました。『eお薬さん®』は、服薬時間をセットしておけば薬の入ったケースが出てくると同時に音声によって服薬を促す仕組みになっているため、声で促されれば服用を忘れないと考えたのです」
中央調剤薬局グループには在宅推進チームが置かれており、コーディネーターの水越智さんが店舗全体の在宅訪問を把握し調整している。西村先生は水越さんと相談の上で「eお薬さん®」をKさん宅に導入することを決定し、水越さん、ケアマネジャー立会いの下、Kさん夫婦と相談しながら機器を設置した。
Kさん夫婦には機器を入れることに対する抵抗はさほどなく、「お利口な機械だね。大したものだねぇ」と喜んでくれたという。妻に認知機能の低下があるかもしれないと考え服薬後にケースを戻すという作業は省略し、箱を置いて一包化の空き袋と一緒にケースをそのまま入れてもらうように工夫したため、操作にもすぐ慣れた。
「eお薬さん®」の設置は有用であった。飲み忘れがなくなったのだ。取材時は設置後8カ月が経過していたが、飲み忘れがない状態を保っているという。服薬のデータは「eお薬さん®」から通信で送られてくるため、服薬がきちんとできているのを日々確認することができるという。

薬剤師の在宅訪問と「eお薬さん®」がもたらしたもの

現在、西村先生は介護保険の居宅療養管理指導で糖尿病を患うKさん宅に月4回の在宅訪問を行っている。「訪問は昼食時のことが多いのですが、顔色を見てからできればバイタルチェックを行い、奥さんがつけている血圧の数値を見せてもらい、取り留めもない話をしながら、エアコンをつけているか、水分は摂れているかなどさりげなく生活ぶりを観察します。そして『eお薬さん®』の空きケースと薬の空袋を見て服薬がされていることを確認します。訪問後はケアマネジャーと主治医に状態を報告します」
取材の日は夫の診察日だったが、血糖値が改善して薬が減量になったという。「きちんと服薬されたことで、数値が改善したと思われます。こうして薬による治療の効果が現れ減量や減薬につながっていくというのは大きなメリットだと思います」と西村先生。
飲み忘れを防止するだけでなく、「eお薬さん®」から送られるデータから服用率が正確に把握できるため、主治医への報告がより信頼のおけるものとなった。主治医が診察時に患者様の病状を診る時、薬をきちんと飲んでの結果なのか服用率が悪い中での状態なのかは大きなカギになる。薬剤師が在宅訪問を行って在宅での患者様の様子を見守ることで、服薬率の向上と病状の改善が期待される。また、服薬率の把握によって治療方針に根拠が生まれ、変化の早期発見、さらに処方の再構築につながっていくのである。Kさん夫婦の場合、「eお薬さん®」はそのために欠かせないツールとなっているのである。
また、主治医に妻の服薬忘れについての報告をしたところ、主治医から認知症の専門医へつながり、検査の結果初期のアルツハイマー病と診断されて抗認知症薬の処方が追加となったという。
Kさん夫婦は、二人で仲良く助け合いながらできるだけ在宅での暮らしを続けていきたいと願っている。
「奥さんは料理が好きで、今でもちゃんとつくっています。ご主人はほぼベッド上で過ごしていますが、日中は歩行器を使ってトイレまで行くことができます。これまでの一番の問題が薬の飲み忘れだったのですが、『eお薬さん®』の導入によってそれが解決できました。きちんと服用できるようになったことでご主人の血糖値が改善し減量につながりました。また、週1回の訪問でちょっとした変化にも気づくことができて、早期に対応することができます。現時点の状態をできるだけ長く保つことで、このまま在宅での暮らしが続けられると思っています。訪問薬剤師の立場でできるだけKさん夫婦が望む在宅での暮らしを支援していきたい」と西村先生は話す。

住み慣れた地域で最期まで

「eお薬さん®」の活用について、西村先生は次のように語っている。
「私たちは患者さんの状況を見極めて、その人に合った方法で服薬の支援をしていきたいと思っています。お薬カレンダーが有効な方もいれば「eお薬さん®」が有効な方もいます。特に機器の活用については、Kさん夫妻のように同居家族がおらず独居や高齢者のみの世帯でも、地域でこれまでの暮らしを最期まで続けられる可能性を広げると思います。軽度の認知症の人は、日常生活は何とか送っているけれど薬を飲むことに関して次第に“うっかり”が増えてくるような場合が多いのですが、そこで在宅生活をあきらめる必要はないということです。服薬支援のためにヘルパーさんを導入するという手段もありますが、機械に任せられるところは機械に任せればいい。人の手を借りずに自立しているという意識が患者さんのさらなる自立につながっていくと思うのです。機器のデータをもとにモニタリングをするのは人間である薬剤師の役割です」
「eお薬さん®」は、主に薬局を通しての導入である。音声で服薬を促し、データが転送されることで見守り機能も発揮するが、さらに訪問薬剤師がモニタリングを行い、ケアマネジャーや主治医等との連携の一つのツールとすることで真の効果を発揮する。
認知症になっても最期まで住み慣れた地域で暮らし続けられる地域包括ケアの構築が大きな課題となっているが、「eお薬さん®」のような機器が多職種連携の一翼を担う時代になってきているのではないだろうか。

※使用感は個人の感想です。

※見守り支援機能を搭載した服薬支援機器「eお薬さん®
製品に関する詳細は、eお薬さん®のサイトをご覧ください。https://www.e-okusurisan.com/
「eお薬さん®」は医療機器ではありません。

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