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在宅医療の臨床課題

サルコペニアとフレイル、ロコモティブシンドローム

◆サルコペニア(sarcopenia)とは

サルコペニアとは、ギリシャ語で筋肉(sarx)と喪失(penia)の造語で、1989年にIrwin Rosenbergによって加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下を意味する言葉として提唱された。
2010年、EWGSOP(European Working Group on Sarcopenia in Older People)のコンセンサス論文では、“『サルコペニアは進行性および全身性に認められる骨格筋量および骨格筋力の低下であり、身体的障害やQOL低下、死のリスクを伴う老年性症候群』と定義されている。”※1

サルコペニアは寝たきり、嚥下障害、呼吸障害の原因の一つであり、70歳以下の高齢者の13〜24%、80歳以上では50%以上に認められるため、在宅医療においてその評価と対応は重要とされている。
Baumgartner RN. Et al.:An J Epidemiol 1998:147:755-763

発症メカニズムは明らかではないが、加齢、廃用、内分泌、神経変性疾患、栄養不良、悪液質などによってたんぱく質の合成、分解、神経や筋へ様々な機序に対して影響を与えることによって筋肉量や筋力の低下が生じるとされている。

◆サルコペニアの診断基準

①筋力量の低下
DXAによって算出した筋肉量と身長をもとに評価
②筋力の低下
握力測定
③身体能力の低下
歩行速度

①に加えて、②と③のいずれかまたは両方を満たすもの

※診断基準のうち①が認められる状態を『プレサルコペニア』、①に加え②か③のどちらかが認められる状態を『サルコペニア』、すべて認められる状態を『重度サルコペニア』

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P54より作図

◆原因によるサルコペニアの分類

臨床的には加齢以外に原因が明らかでない『一次性(加齢性)サルコペニア』と加齢以外に原因がある『二次性サルコペニア』に分類される。

◆フレイル(frailty)とは

フレイルとは高齢期に様々な生理的予備能が低下することによって、ストレスへの耐性低下が起こり、健康障害が生じやすい状態を指し、健康と身体機能障害の間の段階として位置づけられている。

図1.フレイルの位置付け

図1.フレイルの位置付けを示す。no frailty(健康)時は予備能力が高く、加齢とともにfrailty(虚弱)⇒disability(身体機能障害)となり、comorbidity(依存症)状態となっていきます。

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P55より作図

◆フレイルの評価指標

フレイルは一般的にFriedらによる評価指標が用いられる。

以下の5項目のうち3項目以上に該当するもの
  • ①体重減少
  • ②疲れやすい
  • ③身体活動量の低下
  • ④歩行速度の低下
  • ⑤筋力低下

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P55より作図

フレイルは身体的要素だけでなく、認知機能障害やうつなどの精神・心理的要素、独居、経済的などの社会的要素も含まれ、生活機能全般の低下を包括した概念としている。
フレイルでは、5つの項目が互いに相関し負のサイクル『フレイルティサイクル』を作ることで悪化していくと考えられている。このサイクルの中核として『サルコペニア』や『低栄養』があり、フレイルの増悪に影響する。

在宅医療におけるサルコペニアとフレイル

サルコペニアの進行を防ぎ、フレイルの増悪による身体機能障害への移行を防ぐことが、在宅で安定した療養生活を維持管理するために非常に重要である。
運動推奨や栄養管理指導、また肺炎、転倒・骨折、食欲不振などの早期治療や改善、認知症の管理、適切な介護サービスの導入支援などによるフレイルの増悪の予防が求められる。

◆ロコモティブシンドローム

在宅医療において留意すべき整形外科疾患として、ロコモティブシンドロームを念頭に置く必要がある。高齢化に伴って運動機能低下につながる様々な骨関節疾病を包括的に運動器の障害と捉え、QOLを高めることを目的に治療することが必要である。在宅医療においても転倒予防や骨折リスクの回避につながる介護予防の概念そのものといえる。

参考文献

・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P54〜55を改変

・スーパー総合医・在宅医療のすべて P44を改変

引用文献

※1公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P54

監修:全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田 國夫