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在宅医療の臨床課題

転倒と骨折

◆寝たきりの原因となる『骨折』

寝たきりの原因として、骨折が非常に多い。高齢者は転倒などの軽微な外傷によっても、容易に骨折するため、転倒などの外傷の防止と活動性を損なわせない適切な治療によって寝たきりを予防することが重要である。

◆骨折の予防

虚弱高齢者では、骨折の予防こそが寝たきりの予防につながるといえる。高齢者の骨折に関する疫学調査では、“転倒の危険因子として、①女性である、②歩行速度の低下、③転倒の既往(短期間に多数回)があることとされ、10回転倒すると1回の確率で骨折を生じる”※1 と報告されており、骨折の予防には下肢筋力の強化が効果的とされている。この調査は自立生活を行っている高齢者への調査なので、在宅医療の対象となっている要介護の高齢者では、骨折のリスクがもっとも高いことが予測できる。

◆骨折の診断

転倒や尻もちなど軽微な外傷であっても、四肢の運動制限、局所の腫脹や熱感、疼痛を認める場合は骨折を疑い、X線単純撮影で確認する。最初の撮影で骨折と診断されなくても、痛みが続く場合は、2〜3週間後のX線再検査を行う必要がある。
急に歩行しなくなる、おむつ交換で痛みがでる、など外傷の受傷機転が明確でない場合も、骨折を疑う必要がある。

◆骨折の治療

大腿骨頸部骨折

高齢者が転倒した場合、最初に疑うべき骨折である。内側型では人工骨頭置換術がよい適応となり、外側型ではスクリューなどで固定する。このような手術は麻酔を含めて大きなリスクを伴い、特に認知症や心疾患などがある在宅療養中の高齢者では、積極的な加療は必要ないと判断するケースもある。

脊椎圧迫骨折

尻もちをついたような場合、最初に疑う必要がある。骨折そのものに対する積極的な治療は不要と考え、疼痛管理をしっかり行う。日常生活動作においても禁止せず、過度の安静を禁忌として、廃用性症候群の予防に努める。

上肢の骨折

高齢者では上腕骨外科頸骨折が多いが、3週間程度の三角巾固定し、早期に振り子運動を実施する。ギプス固定による不快感から夜間不穏、不機嫌、摂食障害、脱水や低栄養が進行するなど、骨折が治癒してもQOLが損なわれるケースもしばしばみられる。

参考文献

・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P88〜89を改変

引用文献

※1公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P88

監修:全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田 國夫