疼痛管理
◆在宅医療における疼痛管理
在宅医療においては様々な疾患を原因とする痛みが生じるため、それぞれにあった疼痛管理が必要とされる。
◆運動器障害の疼痛管理
NSAIDs投与が一般的だが、体重40kg以下の超高齢者への漫然とした長期投与には注意が必要である。半減期の短い薬剤の投与や投与経路を考慮した坐薬など患者さんに適切な薬剤の選択が重要である。胃粘膜病変の発症にも注意し長期投与の場合、貧血の進行や便潜血のチェックを忘れない。
◆がん疼痛の管理
・がんの痛みについてのアセスメントで重要なのは、どのような原因で、どこにどのくらいの痛みが生じているかを判断し、
“WHO疼痛ラダーを用いた疼痛緩和を図ることで、約9割の患者の除痛が可能とされている。”※1
・がん疼痛はがんが周囲組織を巻き込むことで生じる。神経障害性疼痛や骨転移の場合は疼痛管理が難しい。
・疼痛コントロールの目標は3段階を設定し、一つずつ達成することを目指す。
第1目標:痛みによって夜間の睡眠が妨げられないようにする。
第2目標:安静時の痛みを消失させる。
第3目標:体動時の痛みを消失させる。
また、目標達成のための鎮痛薬の処方についてはWHOの疼痛緩和5原則を基本とする。
・経口的に
・時間を決めて規則正しく
・WHO疼痛ラダーに沿って
・患者さんごとに個別的な量で
・そのうえで細かい配慮を
・WHO疼痛ラダーでは、第1段階でNSAIDsおよびアセトアミノフェンを用いる。
第1段階の薬剤を投与しても痛みが残存したときや中等度の痛みがある場合には、第2段階の薬剤として弱オピオイド鎮痛薬を使用するが、NSAIDsとの併用も推奨されている。
それでも、痛みが残存する場合はモルヒネなどの強オピオイド鎮痛薬を使用する。モルヒネでは便秘と嘔気対策が必須である。また依存性や習慣性などモルヒネに対する不安を持つケースがあるので、正しい説明が必要である。
・がんが神経に浸潤した痛み(神経障害性疼痛)では、オピオイドだけではコントロール困難なため、鎮痛補助薬を使用する。鎮痛補助薬は鎮痛薬ではないが、ある一定の条件のもと鎮痛薬と併用することで鎮痛効果を表す薬剤であり、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗不整脈薬、NMDA阻害薬、ステロイドなどがあげられる。
※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P156より作図
参考文献
・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P70〜73(運動器障害)
・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P155〜160(がん疼痛)
引用文献
※1公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P155
監修:全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田 國夫