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在宅医療の臨床課題

認知症

◆認知症診療の基本

認知症は発達期に一度獲得した知能が、後天的に脳や身体疾患を原因として慢性的に低下し、社会生活や家庭生活に影響を及ぼす状態であり、わが国の要介護高齢者の半数近くが認知症とされている。“認知症の基礎疾患は多彩であり、70以上あるとされているが、主な認知症はアルツハイマー型(AD)、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型が4大認知症とされている。”※1
中でも、中核症状の進行が一定の経過をたどる典型的なADについて理解することが大切である。

表. 4大認知症の鑑別診断

疾患 アルツハイマー型認知症 脳血管性認知症 レビー小体型認知症 前頭側頭型認知症
疫学 女性に多い 男性に多い 60歳以降、男性に多い 初老期に多い
発症 緩やか 比較的急 緩やか 緩やか
進展 スロープを降りるように 発作のたびに階段状に進行
(例外あり)
進行性、動揺性
全経過 10年(2~20年) 7年 ADより短い(7年) 一般的に臨床経過は速い
記憶障害 初めから出現 比較的軽度 初期はADに比べ軽度 ADに比べ軽度
身体症状 重度になるまで出現しない 精神症状に先行、or並行して悪化 パーキンソン症状、転倒、自律神経症状 失禁は早期に出現する
精神症状・
徴候
もの取られ妄想(ADに特徴的。軽度で出現) 意欲、意識、感情の障害 ありありとした幻視・認知機能の動揺、構成障害、レム睡眠行動障害、妄想性誤認症候群 人格の変化、感情の平板化、脱抑制、無関心、常同性、食行動異常
予防・治療 ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンが有効 生活改善、薬物(抗血小板療法など)による予防が可能 ドネペジルが有効 SSRIが有効。著しいBPSDには非定型抗精神病薬を使用
その他 感情、運動は重度となるまで保たれる 局所の神経症状、動脈硬化危険因子 抗精神病薬への過敏性

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P66より作図

◆在宅での認知症の診断

認知症は最も近しい家族が『様子がおかしい』と気づくことが診断のきっかけになる場合が多いため、家族から症状について経過を追って詳しく聴取し、問題となるエピソードがどのような状況でどのように認知の障害を認めたかなどを把握することが非常に重要である。また、随伴する身体症状、既往歴、外傷歴、飲酒歴、服薬歴なども詳しく聴取することが必要である。
基礎疾患の明らかでない認知症の初回診療については、血液検査、頭部CTやMRIが必要である。また、改訂長谷川式簡易知能評価スケールやMMSEなどの神経心理検査を実施する。

◆在宅での認知症診療

・初期のAD患者さんへの支援として、患者さんや家族の『解釈モデル』や心理状態を理解したうえで、診断をシェアし、丁寧な教育的支援を開始することが重要である。また、その中で、ドネペジルなどの抗認知症薬の開始を検討することが初期支援の一つである。

・認知症高齢者のフォローアップでは、患者さんが安心して頼れる環境を作ることと、安全と感じられる環境を作ることが必要である。独居の認知症高齢者では、早期からホームヘルプやデイサービスなどを利用もすることも必要である。また、介護者がいる場合には、患者さんの家族や介護者からの訴えを傾聴し、速やかに介入するなど家族の支援体制が重要となる。

・ケースマネジメント機能と主治医機能が常に連携し、種々の問題に迅速に対処することが認知症フォローアップのポイントであり、患者さんの行動を十分観察し、患者さんの残存能力を生かしたケアを考え、実践していくことが重要である。

・BPSDは認知症の中核症状をもとに、患者さんの生来の性格や心理的状況、環境要因などが重なって現れる。BPSDは、患者さんの苦痛のあらわれであるとされ、患者さんのQOLを著しく損ない、家族や介護者にも大きな負担を強いることになり、在宅生活の破たんのきっかけとなることも多い。デイサービスの導入や環境の改善、BPSDの悪化原因となる薬物の中止や身体合併症の治療など総合的に実施することが大切である。なお、中等度以上や病的なBPSDに対しては抗精神病薬などの薬物治療を考慮する。

・“認知症患者の9割になんらかの合併症があり、認知症患者さんの多くはその合併症で死亡している。”※2 認知症患者さんでは適切な受診行動をとることが難しいため、認知症の程度にかかわらず死亡率の上昇が認められている。従って、認知症の全期間を通じて十分な全身管理が必要であり、合併症の早期発見、早期治療が重要である。

◆認知症の緩和ケア

重度~末期認知症患者さんに対しては、緩和ケアが最優先されるべきケアである。緩和ケアは①症状の観察と緩和、②チームアプローチ、③コミュニケーション、④家族の支援、⑤食支援が基本となり、併せて苦痛の緩和や口腔ケアによる肺炎の予防、経口摂取と栄養状態の維持が大切である。また、代理意思決定者の意思決定支援が重要であり、代理意思決定においても可能な限り早期から意思決定を支援することが推奨される。

参考文献

・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P66~69を改変

引用文献

※1公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P66

※2公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P68

監修:全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田 國夫