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在宅医療の臨床課題

褥瘡

◆褥瘡とは

圧迫など外力による阻血状態から皮膚障害が引き起こされるもので、圧迫以外にもずれ、引っ張りなどの力も大きくかかわるとされている。また褥瘡が発生することが、患者さん自身の抵抗力と周囲の介護環境のバランスの破たんを意味するともいえる。在宅で褥瘡を発症した際は、病状とともに介護環境にも留意する必要がある。
一度褥瘡が生じると長期間の治療と労力やコストがかかるので、褥瘡が生じやすいケースへの予防介入が必要である。ベッド上で身動きがとれず、仙骨などの骨突出があり、関節が拘縮していて、低栄養で皮膚が湿潤している部位があるなど、すなわち寝たきり患者の褥瘡発症リスクが高いとされているため、このような患者さんに対しては褥瘡が生じる前から体圧分散寝具などを使用し、褥瘡発症を回避することが重要である。

◆創の評価

日本褥瘡学会は褥瘡の経過観察ツールとしてDESIGN-Rを示している。
すべての褥瘡をD(深さ)、E(滲出液)、S(大きさ)、I(炎症)、G(肉芽組織)、N(壊死組織)の部分で評価し、ポケット形成を伴っていたら、P(ポケット形成)について評価する。

表. DESIGN-R 褥瘡経過評価用

DESIGN-R 褥瘡経過評価用の表。Depth(深さ)、Exudate(滲出液)、Size(大きさ)、Inflammation/Infection(炎症/感染)、Granulation(肉芽組織)、Necrotic tissue(壊死組織)、Pocket(ポケット)の項目をチェックします。
※1:”短径”とは”長径と直交する最大径”である ※2:持続する発赤の場合も皮膚損傷に準じて評価する
(日本褥瘡学会ホームページ http://www.jspu.org/jpn/info/design.html

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P79より作図

◆褥瘡の治療

褥瘡の発症は患者さんの病状、ケアの状態のバランスが崩れていることを示しているため、徹底的に原因を取り除き、バランスを元の状態に戻すことが治療において重要である。

・末期がんや老衰で寝返りができない患者では治癒が難しいケースがあるので、治せる褥瘡かを見極め、そのようなときは静かに見守ることも選択肢の一つである。
・在宅医療では、看護や介護の介入において、改善できる部分とできない部分がある。様々な状況を考慮して、可能な範囲でできることを一つずつ行っていくことが、必要である。
・体圧分散寝具の使用は褥瘡対策の中で確立したエビデンスを有している。患者さんの状態に合わせて、体圧分散寝具(マットレス)を選ぶことが褥瘡対策に有用である。

図. 体圧分散寝具(マットレス)の選び方

体圧分散寝具(マットレス)の選び方の図。「自力で寝返りがうてるかどうか」⇒「45度以上のギャッジアップを行うかどうか」で、ウレタンマットレス(交換型/上敷き型)・エアマットレス(交換型/上敷き型)の選択肢があります。

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P80より作図

・在宅での褥瘡例では、ほとんどが栄養障害を伴っているため、栄養状態への介入は重要である。経口摂取の効率を上げるため栄養バランスを見直す必要がある。少量しか食べられない患者が食事のみで必要量を満たすことは容易ではなく、半消化態栄養剤に加え、目的に応じた栄養補助食品を併用する。嚥下に問題がある場合は口腔内ケアも大切である。
・“褥瘡の局所療法では、『湿潤環境の維持』、『滲出液と壊死物質の除去』、『消毒より洗浄』が基本戦略となる。”※1 消毒薬は組織を傷害するので、組織再生を期待する場合、できるだけ使用しないことが原則である。創が化膿し、発熱した際はデブリードメンや排膿などの局所コントロールとともに、抗菌薬の全身投与を検討する。
・創の創傷被覆材(ドレッシング材)では、ポリウレタンフィルム、ハイドロコロイド、アルギン酸ドレッシング、ポリウレタンフォーム、OpWT(開放性ウェットドレッシング療法)ドレッシングなどが用いられる。また、外用剤では、感染抑制用外用剤や上皮・肉芽形成促進薬を用いる。
・深い褥瘡は、しばしばポケットを形成し、滲出液がたまりやすく壊死物質も貯留しやすいため、洗浄をこまめに行い、上皮・肉芽形成促進薬の併用や局所麻酔下に切開開放して治療を行う。

参考文献

・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P78〜81を改変

引用文献

※1公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P80

監修:全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田 國夫