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かかりつけ医に必要な在宅医療の知識(第3回)

かかりつけ医の看取り新田 國夫(医療法人社団つくし会 理事長)

はじめに

現在第1号保険者は3,302万人いるが、その中で要支援・要介護高齢者は592万人(17.9%)を占めている。日本の高齢者の居住の場は、高齢者の90%以上、要支援・要介護者の80%が在宅生活である。要介護になれば施設入所が言われる時代であるが、ほとんどの人が在宅生活をしているのが実情である。施設入所者は第1号保険者の4%に過ぎない。後期高齢者12.9%が現在の時代の数字である。2030年には後期高齢者は20%となり、要介護者も現在の17.9%から23%へ増大する。しかしながら、こうした数字は全国の集計値であり、各地には、すでに2030年、あるいは2060年の人口構造を持っているところも多々存在する。将来の人口構造は65歳以上が多数となり、医療、介護の対象者もまた、75歳以上が主人公となる世界である。病院世紀の時代から地域包括ケアの時代への転換である。居住者はかかりつけ医を持ち、外来通院をし、通院が不可能となり、在宅患者になる。

かかりつけ医の”医療の質”

病院世紀の時代は、戦後から日本の復興と同時代に大きな役割を果たしてきた。世紀末の転換は超高齢時代、家族主義の転換にともない医療の転換が求められた。一つの臓器あるいは疾患を治療する「治す」医療から、「治し生活を支える」医療への転換である。しかしながら、時代の変換期には様々な価値観が入り乱れる。特に市民にとっての価値観は長い年月をかけて生活の中で培われてきたものであるから、時間を必要とする。かかりつけ医の転換も同様である。転換ができないのも市民の転換と同じである。またいつの時代にも共通の価値観がある。例えば、老いについて青年期・壮年期に真剣に考える人はなく、老人は自分に関係のない異種族と見なしている。老いは他者だけに起こる現象と考えている。誰もが経験する老いは、人生の究極的な意味をなすことであると考えている。しかしながら直面する問題は病気と貧困、無為と孤独、あるいは、絶望すら漂わす高齢者がいかに多いのかも痛感させられる。社会、あるいは家族もまた、社会の構成員からの離脱を促し、施設に入れようとする。抵抗感さえなく、家族の負担になりたくない理由で、本人も家族の決定に従う。病院医療は家族の希望であり、逃避にもなる。結果、本人の希望ではなく、病院での死亡構造、施設での看取りの増加となる。
患者の立場からすれば、医療において最も求められるのは自分の病気が的確な治療により治ることである。したがって質の高い医療は、患者がよく治る医療とし、評価している。しかしながら在宅医療は、先端医療では対応不可能な疾患を持った患者を対象としている。患者・家族の意思を汲み、医療の都合を優先するものではない。したがって、在宅医療の質の評価は質の高いQOL(生活の質)が評価基準となる。さらに、人生の最終段階の医療の質が求められる。看取りは、満足死に繋がるものでなければならない。

人生の最終段階における”医療の質”とは

人生の最終段階において、より質の高いQOLを得るため、高齢社会では在宅医療が欠かせない。在宅医療は、国家的コンセンサスとなった。全国各地、個人の力で切り開かれた時代から新しい人材が求められている。その意味で、質と面の双方の共存した広がりが求められる。介護保険、病院医療は日本において国民の誰もが享受することが可能となっているが、在宅医療を希望したとしても、質と面が保障されるとは限らない。要介護者の在宅受療率は要介護3以上の方でも70%を超える。さらには人生の最終段階における医療のあり方と、その人にとっての最善の医療が提供されねばならない。医学的最善が患者にとって最善とは限らない。また、医学者に無益なことが必ずしも患者にとって無益とは限らない。さらに言えば、患者の選択は患者にとって最善の選択とは限らないと考えている。この倫理的問題を理解し、対応することが求められている。求められる対象はかかりつけ医である。地域づくりの原点にかかりつけ医がいる。

在宅で「看取り」まで行うために

かかりつけ医は様々な疾病に幅広く、人生の最終段階の医療も含めて、対応する。生活の中で外来診療から訪問診療、看取りまで行う医師の存在である。従来、総合診療医についての議論が続いているが、名称は違っても同じことを議論しているにすぎない。欧米において、イギリスにおけるプライマリーケア医、他の欧州の家庭医は歴史の流れの中で違いを見せている。名前が違っても違いがないこと、ただし、それぞれの国の医療保険制度の中で医療的内容が多少、違いを見せている。
かかりつけ医、在宅医療は必然の関係であるが、地域の体制は世界各地でも違いがある。特に夜間帯は各国で工夫がある。日本では在宅療養支援診療所にその役割を持たせているが、かかりつけ医も含めたさらなる工夫を必要とする。かかりつけ医が行う在宅医療は一人で行えるものではない。地域で支える、あらゆる職種、家族との共同作業である。共同作業を誰が担うのか、日本における一人開業医の問題がある。24時間体制が課題となる。本来の役割は理解しても、実際に参入するには、その参加形態も含めて再考されねばならない。主軸はかかりつけ医と患者である。患者そしてその家族もまた、かかりつけ医に託す関係性が求められる。
かかりつけ医は診療所機関でもある。診療報酬基準に在宅医療を行う専門診療所には、機能強化型在宅療養支援診療所と同様な施設基準として、患者・家族等からの相談に応じることが認められたが、看取りまで行う診療所の医師、すなわちかかりつけ医の機能に加えて、診療所の事務、看護師が対応する能力を持って行う機能があって、可能となる。
癌の看取りについては、緩和ケアに習熟する必要がある。疼痛緩和が可能であれば、患者は病院を求めない。治療が不可能となった患者は、誰もが最期まで人生を全うすることを願い、病院の医療を期待しない。病院、ホスピスを求めるときは苦痛が残っているときである。

おわりに

今後、10年を経過すると、85歳以上の死亡率が50%近い数字になる。これからの医療は、75歳以上の医療の中身ではなく、85歳以上の医療がいかにあるべきかを考えたとき、根本的に発想が違った人生の最終段階の医療となる。看取りは、医療よりもっと重要な、逆に言えば、当たり前の発想になるであろう。患者の生活そのままを支える医療である。医療の目的は疾病の治療、延命からADL(日常生活動作)、QOL、満足ある人生の最終章を看取ることである。最後は究極の老いの姿を救うことである。

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