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在宅医療の臨床課題

栄養評価と栄養処方

◆在宅医療における栄養評価

在宅医療に占める“要介護状態の在宅高齢者の30~40%が蛋白質・エネルギー低栄養状態(PEM)にあるといわれ”※1 このPEMの早期発見と予防は、在宅医療での栄養管理を考える上でとても重要である。
栄養管理は、医師、訪問看護師、栄養士、家族、ヘルパーらと協働で①スクリーニング、②栄養評価、③栄養療法の適応の検討、④栄養量の決定、⑤投与方法の決定、⑥モニタリングというプロセスを踏んで実施していくことが必要である。

◆低栄養の分類

低栄養は炎症の有無とその炎症が慢性的か急性かで3つに分類される。
この分類のどこに当てはまるかをまず診断し、対処法を考える。

表1. 低栄養の分類

低栄養のタイプ 主な原因 改善の可能性 アルプミン値 羸痩 炎症反応
飢餓関連低栄養 社会的要因などによる食事量摂取低下 栄養摂取量の増加で容易に改善可能 ほとんど低下しない 著明 なし
嚥下障害による食事摂取量低下
上部消化器官狭窄など
慢性疾患関連低栄養 悪性腫瘍による悪液質 原因疾患が改善困難なため進行期には回復は困難。初期には栄養介入の効果がある場合が多い 徐々に低下 初期には目立たず、やがて頸著になる 弱い
COPDによる羸痩
慢性関節リウマチなど慢性炎症持続からの低栄養
慢性感染症(結核など)
急性疾患関連低栄養 肺炎、外傷、熱傷、急性感染症 原因疾患の改善に伴い、改善する 早期から低下 ほとんど目立たない 強い

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P60より作図

◆低栄養のスクリーニングと栄養評価

・低栄養のタイプを診断後に低栄養の指標を用いて栄養状態を評価していく。一般的な低栄養の指標については体重減少率、BMI、血清アルブミン、コレステロール値、総リンパ球などが用いられる。

表2. 一般的な低栄養の指標

低栄養の指標 死亡のリスクとなり得る値(参考)
体重減少率 5%/月・10%/6月 4%/年
2年間死亡率:RR1.38-5.81:95%Cl
BMI < 19(or 18.5) < 23
6年間死亡率:RR1.69-6.39:95%Cl
血清アルブミン値 < 3.5g/dL < 3.8
年間死亡率:RR1.2-6.6:95%Cl
コレステロール値 < 160mg/dL
総リンパ球数 < 800:高度の低栄養
800~1,200未満:中等度の低栄養
1,200~2,000:軽度の低栄養
体重減少率:(ABW-UBW)/UBW×100
UBW:Usual Body Weight 平常時体重、6~12か月安定している体重
ABW:Actual Body Weight 現体重
Body Mass Inde(×BMI):体重kg/身長㎡
RR:相対リスク
CI:信頼区間

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P61より作図

なお“高齢者の栄養評価ツールとしてMNA-SFの有用性が確認されている。”※2
http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf

・低栄養が疑われた場合は、詳細な栄養摂取内容(摂取内容、食事摂取量、体重変化など)や病歴を確認する。薬剤性の食欲不振は多いので、特に抗痙攣薬、利尿薬、キサンチン系喘息治療薬、睡眠薬、抗精神病薬などに注意する。また入歯や口腔内の問題も食欲低下の要因となる。
・生化学的な所見として、炎症反応の有無、総蛋白質、血清アルブミン、総コレステロール、血算、BUN、Cr、電解質、血糖などを確認する。このような数値は経時的変化が重要であり、各個人にあった数値目標とする。
・身体所見では浮腫の有無、臀筋や大腿の筋萎縮の程度にも注意する。

栄養処方

・必要栄養量を満たすことを目指して、患者さん個々の状態を考慮し、必要エネルギー量、必要蛋白質量を推定する。ただし、高齢者の場合は基礎代謝量を考慮して投与量を決定する。

表3. 必要エネルギー量、蛋白質量、水分量の推定表

必要エネルギー量

○必要カロリー量=BEE×活動係数×傷害係数

Harris-Benedictの計算式
男性:BEE=66.0+13.8W+5.0H-6.8A
女性:BEE=665+9.6W+1.8H-4.7A
(W=体重kg H=身長cm A=年齢year)
活動係数:寝たきり=1.2 歩行=1.3
傷害係数:軽度感染症=1.2 中等度感染症=1.5など

○簡易法

重度の代謝亢進ストレス下ではこちらを用いる
必要カロリー量=体重×25~30

必要蛋白質量

必要蛋白質量(g/体重kg/日)
代謝亢進ストレス:
なし 0.6~1.0
軽度 1.0~1.2
中等度 1.2~1.5
重度 1.5~2.0

必要水分量
体重当たり25~30ml

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P62より作図

モニタリングの重要性

・初回の計算で求めた栄養処方量は推測に基づいて決定された値で絶対的なものではないため、実施過程においては体重の急増などの問題が生じてくる。従って、栄養処方が適切に行われているかどうかのモニタリングが必要である。
・モニタリングの指標として、体重測定が重要であり、月1回の体重測定は必須である。また、皮下脂肪厚、体脂肪率などの変化にも注意する必要がある。生化学検査ではアルブミンが良い指標となる。
・週1回程度は、栄養摂取量の把握に努める。“体重1㎏増減あたり7,000kcalの過不足があるという目安とし、栄養サポート計画の判断材料とする。”※3

栄養的介入の検討について

経管栄養などの強制栄養を行うかどうかについては、本人および家族に適切な情報提供を行い、本人にとっての最善の選択ができるように時間をかけて検討することが大切である。

参考文献

・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P60~63を改変

引用文献

※1公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P60

※2公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P61

※3公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P63

監修:全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田 國夫