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在宅医療の臨床課題

運動器障害

◆在宅医療における整形外科疾患

“高齢者の整形外科領域患者数は1,500万人から2,000万人といわれ、ほとんど何らかの整形外科疾患を抱えている。”※1 在宅医療の現場でよくみられるのは整形外科領域の次のような疾患である。

表1. 在宅医療の現場で遭遇することが比較的多い疾患

手関節周辺
CM関節炎、ばね指、デュケルバン腱鞘炎、陥入爪、手根管症候群(正中神経麻痺)
肘関節周辺
変形性肘関節症(水腫)、肘頭滑液膜嚢胞、上腕骨内顆炎、上腕骨外顆炎(テニス肘)
肩関節周辺
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)、肩関節症(水腫)
股関節
変形性股関節症、石灰沈着性股関節周囲炎
膝関節
変形性膝関節症、靱帯損傷(内側側副靱帯損傷・前・後十字靱帯損傷)、半月板損傷、膝関節水腫
足関節、足部
変形性足関節症(外傷性関節炎)、外顆滑液膜嚢炎、外反母趾、偏平足・開脹足障害
脊柱
変形性頚椎症、頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症、胸腰椎圧迫骨折、腰椎変性すべり症、腰椎分離すべり症、骨粗鬆症

※公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P70より作図

◆在宅医療でみられる整形外科疾患のポイント

関節の痛み

安静時の痛みか、運動時の痛みかを起居動作や姿勢によって変わる痛みかなどを見極めることが重要である。安静時の痛みは重篤な場合が多く、腫瘍、感染などを念頭において運動器以外の疾患も疑う必要があり、血液検査による炎症反応や白血球をチェックする必要がある。
関節が痛む場合は関節可動域を健側と比較して可動域制限や腫脹などによって判定する。
急性の痛みは3日から数日で軽減することが多くNSAIDsを投与して経過をみる。症状が軽減しない場合はX線撮影を含め、整形外科への受診を促す。

神経痛・手足の痛み

神経痛は上肢に放散すると頸椎の変形、下肢は腰椎の変形が原因となっていることが多い。
運動麻痺の程度、知覚麻痺の程度、腱反射などで麻痺が中枢性か末梢性かを判断する。診断がつきにくい場合は、帯状疱疹も考慮して数日間経過観察する。両下肢の痺れや痛みは腰部脊柱管狭窄症や変形すべり障害の可能性があるが、多くの症例は長時間歩行することがないので、間欠性跛行の存在が分かりにくく、診断しにくい。

腰背部痛

気付かない程度の軽微な外傷で生じた脊椎圧迫骨折が進行する場合は、約2~3か月にわたって腰背部痛が続く。痛みをコントロールし、できるだけ早く離床させることが重要である。脊髄麻痺症状が生じているときは悪性腫瘍の骨転移も考慮する。
急性心筋梗塞時に左肩への放散痛を認めることがあり、整形外科疾患と誤診されるケースがあるが、安静時痛であることや呼吸困難を伴っていることで鑑別できる。また、尿路結石による腰痛は変形性腰椎症とされることがあるので、在宅においても尿検査の実施が必要である。

◆在宅での痛みの薬物治療

NSAIDs投与が一般的だが、体重40kg以下の超高齢者への投与には注意が必要である。半減期の短い薬剤の投与や投与経路を考慮した座薬など患者さんに適切な薬剤の選択が重要である。胃粘膜病変の発症にも注意し、長期投与の場合、貧血の進行や便潜血のチェックを忘れない。

◆鎮痛薬投与以外の治療

・筋肉痛や神経痛は気温や温度、気圧など天候や環境に大きく左右されることが知られている。特に筋肉痛は温熱療法で痛みが軽減するので入浴が勧められる。
・関節拘縮の痛みについては、電子レンジを利用したホットパックによる簡便な物理療法を行うことができる。
・簡単な包帯固定やサポーター固定で症状が緩和されることは多い。
・腰痛や肩こりの際に圧痛点に局所麻酔剤を注射するトリガーポイント注射や関節内に注入するヒアルロン酸注射がある。

参考文献

・公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P70~73を改変

引用文献

※1公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療テキスト P70

監修:全国在宅療養支援診療所連絡会 会長 新田 國夫