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在宅医療の現場から

医師として、がんの経験者として、
がん患者の在宅療養を支える

2014年2月にステージⅢの進行食道がんが見つかり、その翌月、勤務していた在宅医療クリニックを退職。1年弱に渡る闘病、療養生活を経て、わたクリニックで再び在宅医療に従事することとなった行田泰明先生。在宅医療を始める前の勤務医時代から含めれば、20年近く緩和ケアに携わってきた。ただ、そうして築かれてきた緩和ケア医としてのスタンスは、自分自身ががんという病を経験したことで、「中途半端になりましたね」と行田先生は言う。

「がんになった患者さんが、[なぜ自分なのか][神様なんていない]などと自暴自棄になっているとき、以前なら[後ろを振り向かずに前向きにいきましょう]みたいな言葉をかけていました。でも、いまはそれが励ましにはならないと身をもって理解しています。がんの患者さんは、がんと診断されてから1回笑うまでに、数え切れないほどの涙を流しているのですから。

たとえばご飯が食べられなくなったとします。そうなると一般的には点滴を導入することになります。でも、それは患者さんが望んでいることなのでしょうか。私は闘病中に経管栄養を経験しましたが、つながれるということは苦痛の種になり得ます。いずれにしても、患者さんに何かを提案するとき、本当にそれで良いのか立ち止まって思いを巡らせるようになりました。食べられなくなったら点滴という図式からすれば、自分の医療的対応は中途半端になったといえるかもしれません」

行田 泰明先生
行田 泰明先生

何かあったときに、
肩を差し出せる医師でありたい

どんな治療を選択するか。どこで療養するか。最終的に判断するのは患者さんと家族であり、医療者はその決断を尊重し、できうる限りの支援をしていくべき――もともとあったそんな思いはがんの闘病を経て、より強くなった。「いま緩和ケア医としてのポリシーを問われれば、肩を差し出す医療、と答えます」と行田先生は語る。

「ともすると医療者は、患者さんや家族を背負い[あなたのため]と言いながら、自分の思う方向に連れていってしまいます。私は背負うのではなく、しっかりと患者さん、家族に寄り添い、困ったとき、何かあったときに肩を差し出せる医師でありたい。最終的に入院を希望されるのであればネットワークを最大限に生かして病院を探しますし、最期まで自宅療養を望むのであれば、可能な限りのお手伝いをする。患者さんや家族が望む方向に進めるよう、支えていきたいと思っています」

わたクリニックがあったから、
いまの自分がある

がんを患ったことで、がん患者を支える緩和ケア医としてのポリシーは明確になった。しかし、闘病を経て現場への復帰が可能な状態になっても、がんの経過観察中であることがわかると雇用を見合わせる医療機関もあり、自身の理念を行動に移す場を見つけるのは簡単ではなかった。「わたクリニックがあったから、渡邉先生の誘いがあったから、こうして仕事ができています」。そう語る行田先生は、週3日勤務の常勤医だ。

「基本的には火、木、金曜日が出勤日となります。渡邉先生の提案でそうなったのですが、がんの術後でしたし、身体に負担がかかってはいけないと配慮してくださったのだと思います。現在は夜間や時間外に渡邉先生がファーストコールに出られないときのセカンドコールの対応、わたクリニック船堀のファーストコールの携帯電話も所持していますから、出勤日以外に看護師に指示をしたり、往診したりすることもあります。気持ち的には週5ないしは週6日勤務ですね」

現在、わたクリニックの常勤医9名のうち、週5日勤務は渡邉先生を含め3名しかいない。行田先生を含む6名の常勤医は週3ないし週4勤務。そして週2ないし週1、当直対応の非常勤医が13名いる。働き方はそれぞれだが、患者さんの最新の病状や予測される経過、家族を含めた会話の内容、今後必要になるかもしれない処置などはすべて電子カルテで共有されており、医療の質に差が生じることはない。

「素晴らしい職場だと思っています。個々が自由にワークライフをデザインできるわけですから。医療者のQOLを高めること、医療者が余裕を持つことは、患者さんのQOLを高めることにもつながるはずです。また、そうした自由な働き方を志向するクリニックだからこそ、がんを経験した私が問題なく現役を続けられるのではないでしょうか。渡邉先生には感謝してもしきれません」

行田先生のバッグの中身
行田先生のバッグ(左)の中身は、聴診器や体温計、パルスオキシメーター、メモ用の裏紙を閉じたファイル、パンフレット類、ビニール手袋、駆血帯、ピンセットなど。「移動中の車内では、血圧計のマジックテープについたホコリを取り除いたりしています」と行田先生。患者さんへの気配りは、細部まで行き届いている。
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